東北の田舎自治体にサッカー施設と農園を作るかどうかの住民投票、不正が発覚し中止に

　構想に反対する無職女性（６７）は「死亡者や代筆など無効な署名があったとすれば、それを根拠にした住民投票は成り立たないはずだ」と指摘。「大きなサッカー場を造っても長く維持できるのか。構想自体を一度立ち止まって考える機会になればいい」と話す。

　無職の残間清機さん（８０）は「住民投票が中止の方向に向かい安心した。人口減の町に大規模施設を建設しても負債になるだけだ。今回の結果を受け、構想を進められなくなるのではないか」と推測する。

　ＳＳＰ構想の予定地がある粕川地区では、中止を残念がる声が相次いだ。

　構想に賛成の立場で署名活動に取り組んだ中粕川行政区前区長の赤間正さん（７４）は「想定しない事態が起きた。町選管や地裁に止められれば結果を受け止めるしかない。再び署名活動するには時間が足りず、エネルギーも必要」と吐露。「議会解散を求める一定数の民意は示した。今後も議員に働きかけを続けるしかない」と声を絞り出した。

　地権者の１人である元公務員の男性（６６）は「代替案もないのに議会がなぜ反対するのか分からない」と憤り、地裁の決定には「既に投票券や投票所に多くの税金が使われた。署名にどう不備があると判断したのか知りたい」と嘆いた。

　元農業の男性（７４）は「投票が無駄になるのは残念だ。何もしなければ過疎の町は衰退していくだけなのに。多くの議員は将来が見えていない」と指摘した。

　賛否を巡り、町内が対立する状況は１年近くも続く。町政が混乱する状況にいら立つ町民も少なくない。

　自営業の男性（４０）は「構想に賛成だが、署名に不備があったと聞くと推進派にも不信感が募る」と強調。「町も議会もこの問題だけを議論している。話し合うべきことは他にもあるはずだ」と漏らした。

村井知事「町選管が必要なチェックを」
　大郷町が進めるスマートスポーツパーク（ＳＳＰ）構想に絡む町議会の解散の是非を問う住民投票で、仙台地裁が執行停止の申し立てを認める決定をしたことに関し、村井嘉浩知事は９日の定例記者会見で「住民の皆さんの声を聞いた上で（対応を）検討してほしい」と町に求めた。

　村井知事は、地裁の決定を報道で知ったと説明し「寝耳に水だった」と驚きを表現。争点となった有効な署名数については「非常に重要なもの。町選管として必要なチェックをしっかりするべきだ」との見解を示した。