拘置所・刑務所の売店がほぼ全て閉鎖、差し入れが制限される「異常事態」

拘置所と刑務所、差し入れ用の売店ほぼ閉鎖　物価高騰で業者が撤退
7/13(日) 10:00配信

朝日新聞

全国の拘置所や刑務所の差し入れ用の売店が、今年3月までにほとんど閉鎖していたことが法務省への取材でわかった。「異常事態だ」と弁護士は問題視する。

勾留中の被告や受刑者には、面会人からの衣類や日用品、書籍などの差し入れが認められている。被告の場合は、お菓子やパック飲料などの食料品も受け取れる。ただ、持ち込まれたお菓子の箱に違法薬物などを隠されると、施設側が見破るのが難しいため、売店で購入できるものに限られていた。

法務省によると、拘置所・刑務所の差し入れ用の売店のうち、大部分にあたる76店舗が今年3月末までに閉鎖した。

各店舗の運営は、旧民主党政権時の「事業仕分け」によって、2011年以降、財団法人から民間運営に切り替わった。一斉閉鎖は、76店舗すべての運営を担ってきた業者が撤退したためだ。理由は、物価高と人件費の高騰だった。

売店の閉鎖により差し入れが制限されている現状について、法務省の担当者は「好ましくはない」と話す。

現金を差し入れてもらえば、被告や受刑者が手持ちのお金で購入する「自弁」という手段がある。ただ、自弁は拘置所・刑務所側が購入希望を取りまとめるため、購入回数や個数が制限される。被告や受刑者の手元に届くまでも数日かかる。

「外の世界では『たかがお菓子』でも、身体の自由を奪われている収容者にとっては大きな意味を持つ。差し入れに制限がある現状は異常事態だ」と石側亮太弁護士（京都弁護士会）は指摘する。

刑事訴訟法では勾留中の被告への食料品の差し入れを禁止できないとしており、「売店を閉鎖したまま、外部からの飲食料の差し入れを事実上拒む対応は違法となる可能性が高い」。

法務省は、来年度から5年間の差し入れ品を扱う業者を選定中だ。公募にあたって、人件費削減につなげられるよう店員常駐を要件から除外。「ネット通販や注文端末の設置などでも可」とした。（酒本友紀子）

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