兼松、世界初の球状歯車を量産へ 産業界のゲームチェンジャー登場

カメラのブレ防止などに使われる「ジンバル（回転台）」機構では上下、左右、前後の3軸で回転させるため、3方向それぞれのフレームを組み合わせる必要があるが、球状歯車一つに置き換えることができ、3割程度の軽量化が可能になる。

自由度の高い動きを生かした活用も見込む。ヒト型ロボットのアームの関節部分に使い、より人間に近い動きを実現したり、ドローン用カメラを歯車の球体部分に設置して機体の動きを少なくしながら、360度撮影できるようにすることなども想定する。

とりわけ期待がかかるのが宇宙空間での利用だ。メンテナンスに制限のある宇宙空間ではエネルギー効率の改善や故障リスクの低減につながる球状歯車の用途拡大の可能性が大きい。人工衛星に電力を供給する太陽電池パドルの軸部分に使えば、光源に向けてパネルを回転させたり、傾けたりでき発電効率を高められる。

化学や医薬分野での研究機器への応用も期待できる。球状歯車では球の回転速度や方向をプログラムで精緻にコントロールできるようになり、球体の中の重力に変化を与えることもできるとみる。球体の中での液体の混合や攪拌（かくはん）実験において条件をより細かく設定することで研究の幅を広げられる。