日本って何が得意なの？

https://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S14879442.html

得意科目は数学　夜間中学卒業生・村田十詩美さん　８０歳

　■Ｈｉ　ｓｉｓｔａ　ｗｉｔｈ　ｙｏｕ

　■６０年ぶりの通学、楽しくて

　「入学したいんですが」。受話器を持つ手も声も、震えていた。１０年前の４月。午後４時５９分だったことは、はっきりと覚えている。生徒募集の締め切り時間ぎりぎりにかけたのだから。

　大阪・西成で小４の頃、継父が倒れた。母の内職の手伝いばかり。中学で家族と別れ、酒屋に住み込んだ。配達と子守の毎日。校舎は目の前なのに行けない。働く姿を級友に見られるのが嫌だった。１７歳で結婚した相手は、酒と博打（ばくち）と病気はしても稼ぎはしない。子は４人。ミシン工場、喫茶店、スナック。働きまくった。６８歳で仕事をやめ、思った。「漢字、書けるようになりたいな」

　夜間中学は役所の広報誌で知った。近所とわかると毎日、犬を連れて見に行った。が、「ぐるぐる回って通り過ぎるだけ」。ついていけるか不安だった。３年が経った。

　約６０年ぶりの通学を「エイヤ」で決めたとき、７０歳。事情を話すと、見学を勧められた。自転車を飛ばした。５分で着いた。

　教室では、ひ孫がいる自分より年配者が机に向かっていた。「これならいけるわ」。見慣れた道端の木が、校舎の窓からは輝いて見えた。漢字を覚えるのは難しく、辞書が友達になった。「国語」と「語る」の「語」が同じ字と知った。

　初めて望遠鏡で星も見た。夜の校舎の廊下から、手を伸ばせば届きそうだった。「それまで、空なんてゆっくり見上げたことなかってん。休みなく働いてきたから」。その日は、月を見ながら自転車をこいで帰った。

　９年通い、昨年に卒業。卒業式は着物で髪を結った。入学した時から決めていた。今は府内の定時制高校に通う。仲良くなったのは、後ろの席の男子。「『おばちゃん』て言うたらどつくで」と冗談をかまし、打ち解けた。

　孫のような友達の恋愛話に口を出し、体育の授業も受ける。校庭への移動時間が５分で焦るが、男子が一緒に歩いて「遅刻」してくれる。女子とはハンバーグを食べに行く。時々おごる。

　毎日が楽しくて、たまらない。

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　貧困で義務教育を十分に受けられず、７０歳で大阪府守口市の守口夜間中学へ。学ぶ喜びを見つけ、卒業した現在は定時制高校に通っている。得意科目は数学。好きな言葉は「笑い」。写真はスナックで働いていた５０代のころ。

　■元気をくれるもの

　卒業前に描いた色紙。いつも月が出る時間に勉強していた

３０年間で成長ゼロ

北朝鮮に並ぶ低成長国家

バカみたいに同じことをやり続ける

それやるの無駄だとか意味ないとか言っても聞かない